結婚は自由だ!パートナーシップ制度ってなに?

G7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の主要7か国)で唯一、同性婚が法的に整備されていない日本において、セクシュアルマイノリティの権利問題が頻繁に取り沙汰される昨今。同性カップルの存在を自治体が公的に承認する「同性パートナーシップ制度」が話題になっています。今回の記事では、同性パートナーシップ制度がどういった内容になっているのか、その条件や制度について見ていきましょう。

渋谷区と世田谷区の違いは?

実は、パートナーシップ制度の内容は制定している自治体によって異なります。2015年に日本で初めて同性パートナーシップ制度を採り入れ、以後も各自治体の見本になっている世田谷区と渋谷区について、申請までの流れや申請条件を比べてみましょう。 世田谷区の場合、要件としては、二人とも成年であること、二人が区内在住であること(区内への転入を予定しているでも可)、二人とも他の人と法律上の婚姻関係にないし、パートナーシップ宣誓もしていないこと、二人の関係が近親者同士(直系血族又は三親等内の傍系血族)ではないことの四点。必要書類は、本人・住所確認資料(運転免許証、パスポート、顔写真付住基カード、在留カード、マイナンバーカードなど)と、戸籍抄本のみ。宣誓の際、希望すれば小型(キャッシュカード程度の大きさ)の宣誓書受領証が交付されます。申請費用は無料です。 対して渋谷区の場合、申請条件は、二人が渋谷区に居住しかつ住民登録していること、20歳以上であること、配偶者及び相手方当事者以外のパートナーがいないこと、近親者でないことの四点。これは世田谷区と同じですが、証明書を取得するまでの流れが違います。「渋谷区パートナーシップ証明発行の手引き」と「任意後見契約・合意契約公正証書作成の手引き」をダウンロードし、これに従って、合意契約および任意後見契約公正証書を作成する必要があります。必要書類は、印鑑登録証明書、戸籍謄本、住民票、本人確認書類。そして、合意契約には約14000円、任意後見契約には約50000円と費用が掛かります。 渋谷区の場合、任意後見契約書と準婚姻契約書と呼ばれる「公正証書」の提出が必要であり、費用もそれなりにかかるのに対し、世田谷区は同性カップルが区にパートナーであることを宣誓すれば手続き完了と、渋谷区に比べて申請のハードルが低いのです。どうしてこのような違いがあるのでしょうか。「パートナーシップ制度」について、それぞれの趣旨を見てみましょう。

パートナーシップ制度の趣旨

世田谷区の場合、パートナーシップ制度は「宣誓」の形をとっており、「人権尊重の取組みのひとつとして、同性カップルである区民の自由な意思によるパートナーシップの宣誓書を受け取ることにより、同性カップルの方の気持ちを区が受け止める」という趣旨になっています。「同性カップルのパートナーとしての誓いを受け止めますよ」というもので、法的効力はありません。 一方、渋谷区の場合、「法律上の婚姻とは異なるものとして、男女の婚姻関係と異ならない程度の実質を備える戸籍上の性別が同一である二者間の社会生活関係を「パートナーシップ」と定義し、条例においてパートナーシップの関係にあることを確認、証明するもの」としています。「条例」というのは、 「男女の人権の尊重」と「性的少数者の人権の尊重」を掲げる渋谷区が制定した「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」のこと。 自治体の議会で決議される条例は、国の法律よりは弱いものの当該区においては法律と同様のものとして扱われます。世田谷区の「宣誓書」と違い、渋谷区の「証明書」は若干の法的効力を持つ文書であるため、その発行には「公正証書」の発行が必要になるわけです。

パートナーシップ制度のメリットは?

それでは、パートナーシップ制度を利用することのメリットとは何でしょうか。実利的な面で挙げるとすれば、渋谷区の場合、LGBT向け住宅ローンサービスが受けられ、区営住宅への入居が認められています。民間サービスでも、一部の生命保険会社が行っている生命保険の受取人を同性パートナーに指定できる制度も利用できるようになります。 また、伊賀市が行っているパートナーシップ宣誓制度では、伊賀市職員共済会の会員の場合、結婚祝⾦、銀婚祝⾦、弔慰⾦の給付、そして伊賀市⽴上野総合市⺠病院で家族同様の扱いを受けられることを保証しています。ちなみに、携帯会社であるsoftbank、au、Docomoの大手三社も、公的な証明書によってパートナー関係が証明される同性カップルを家族割の対象としています(ソフトバンクは証明書不要)。 しかし気を付けたいのが、同性パートナーシップ制度は、法的に認められている婚姻制度(法律婚)とは異なるということ。したがって法律婚を行うことによって得られる法的権利のほとんどが認められません。例えば、税金の配偶者控除や扶養控除は受けられません。二人のどちらかに入院や手術が必要になった時の代理手続きもスムーズには行えないでしょう。 また、相続権も認められないため、夫婦間での遺産相続や生命保険などの受け取りもできません。遺言状による相続にも相続税が課されます。そして、共同親権を持つこともできません。同性婚が認められていない日本において、同性パートナーシップ制度は、あくまでそれを敷く一部の自治体が同性カップルの存在を承認し、尊重していくことを示すためのものであるということです。

広がりつつあるパートナーシップ制度

2015年に渋谷区と世田谷区が日本で初めて公的に同性カップルを承認してから6年。現在、大阪市、札幌市、さいたま市、横浜市、福岡市など、人口百万人を超える大都市を含め、約60を超える自治体で同性パートナーシップ制度が施行されています。現状、日本の現行制度ではパートナーシップ制度の効力もそこまで有用なものではありませんが、同性カップルの存在が公的に承認されはじめたことは大きな一歩と言えるでしょう。これを機に、LGBTの権利がどこまで認められ、同性婚の実現に向かっていくのかが注目です。
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