令和2年9月16日に発足した菅内閣は、不妊治療への保険適用や待機児童の解消と合わせて育児環境の改善を掲げており、その一環として、新婚夫婦の生活支援について新しい方針を打ち出しています。これが、「新婚夫婦の新生活を支援する新しい助成金が始まった!」とSNSなどでトレンドに上がっているのですが、この政策については多くの方が誤解しているようです。「結婚したら誰でも60万円もらえるの?」という勘違いの声がちらほら見受けられますが、現状、ほとんどの世帯は支給対象外です。今回の記事では、今話題の「結婚新生活支援事業」の詳細やその他の補助金について、分かりやすく解説していきます。
結婚新生活支援は誰でも受けられるの?
まずは内閣府ホームページの
「結婚新生活支援事業」の事業概要を見てみましょう。
「結婚に伴う新生活のスタートアップにかかるコストを支援する結婚新生活支援事業(新婚世帯を対象に家賃、引っ越し費用等を補助)を支援する」とあります。交付上限額は1世帯当たり30万円、国の補助率は二分の一、その他の条件として二人の年齢が34歳以下であること、世帯年収が480万円未満であることなど。つまり
、「地方自治体がそれぞれの地域でこのような新生活支援事業を行うなら、国はそれを半額だけ支援します」というものなんです。
それでは、実際に結婚新生活支援事業を実施している市町村はどれだけあるのでしょうか。内閣府ホームページの「交付決定状況」を確認すればわかる通り、驚くほど少ないです。内閣府の集計によれば、現在事業を実施している自治体は全国281市町村、全体の16%しかありません。支援を受けるためには、まずこの限られた市町村に在住していることが条件になります。ちなみに、東京で実施している自治体は一つもありません。結婚新生活支援事業は「地域における少子化対策の推進を目的として実施」されていることもあり、少子化の進行が比較的緩やかな首都圏、都市部での実施地域はほとんどゼロというのが現状です。
しかし、これではあまりに対象地域、対象世帯が少なすぎて政策の意味を成しているとはいいがたいです。そこで菅内閣が新たに方針を打ち出しているのが、「結婚新生活支援事業の支援額の上限を60万円、国の補助率を三分の二に引き上げ、そのほか年齢条件を39歳以下、世帯年収条件を540万円未満に緩和する」というもの。
支援の内容を充実させ、支援対象を拡大することで、財政的に余裕がない自治体などが新たに実施に踏み出してくれることを期待しているわけです。
ただし今のところは「方針を固めた」に過ぎないので、実施する自治体が増えるかどうかはこれからの変化を待つ必要があります。今後どのくらい拡充していくのか、しっかり見守っていきましょう。
そのほかの補助金制度は?
以上、結婚新生活支援事業の詳細について解説していきました。今後どうなるかは分かりませんが、現状ではほとんどの世帯が対象外であることがお分かりいただけたかと思います。しかしながら、「結婚新生活支援事業」のほかにも、特に出産・子育てを計画している夫婦には、自治体によって様々な補助金・助成金が実施されています。
新婚世帯向け家賃補助制度
新生活を行う新婚世帯向けの補助金です。
出産一時金
加入している健康保険から出産一人につき42万円支給がされます。直接支払い制度を利用すると、わざわざ一度自分自身が補助金を受け取らなくても、病院へ直接お金が送られるので手間が省けます。
妊娠健康調査助成金
有料の妊婦検診が14回まで無料になります。自分の住んでいる区市町村に妊娠届を提出すると、妊婦健康診査の受診票がもらえるので、それを病院に届けましょう。
出産手当金
出産に伴う休業の際にもらえる手当です。金額は、【支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額】(※)÷30日×(2/3)という計算で算出されます。
ちなみに支給開始日の以前の期間が12ヶ月に満たない場合は、「支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額」と「標準報酬月額の平均額」のいずれか低い額を使用します。
育児休業給付金
育児に伴う休業の際にもらえる手当です。「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」「賃金台帳、労働者名簿、出勤簿又はタイムカード等」「母子手帳など育児を行っている事実を確認できる書類」が必要なので、これらをそろえましょう。
自治体の情報をチェック!
補助金・助成金の実施状況は自治体によって大きく異なるので、各市町村の公式サイトなどをこまめにチェックすることをお勧めします。もらえるお金はもらわないと損なので、有益な情報を見逃さないようにしましょう!